"サービスの神様"といわれる(株)HUGEの代表取締役 新川義弘氏。その下で"新川氏の最後のまな弟子"と言われるのが今回ご登場の戸田さんだ。
社長業の傍ら講演などもこなし、最近ではなかなか現場には出られなくなっている新川氏と一緒に、「DAZZLE《「ROGOLETTO《などの新業態を創り上げてきた戸田さん。
はたして新川スピリットはどのように伝授されているのか。
カジュアル店では"期待以上"を!
ホスピタリティについて話す前に、店の魅力は店長の魅力そのものなのだ、ということをまずお話したいと思います。店長のレベルが店のレベルと言ってもいい。結局、店長がどれだけ一生懸命に、本気でやっているか、ということがチームワークやコミュニケーションに影響し、結果として店の接客力が高まるのです。
そういう意味では、店長は頭ひとつ抜け出していないといけません。与えるものがなければ人はついてきません。常に高いアンテナを張り、誰よりも勉強していなければいけないのです。そして自分の考えをスタッフに注入し、権限委譲できるような状態を創って初めて、アルバイトの子も店長並み、いや、それ以上の接客力を発揮してくれるのです。
私はこれまで高級店とカジュアル店の両方を経験したことがありますが、より自分らしさを表現できるのがカジュアル・レストランだと思っています。例えば客単価1万円以上の高級店では、それだけのお金をいただいているのですから、サービスが良いのはある意味当たり前です。お客様もそれを期待して来店されるのですから。
しかし一方で、当店のような客単価4500円のカジュアル・レストランの場合、同じ客単価レベルの競合店はたくさんあります。その中で、時には高級店並みのサービスを実現させたり、時には自分で考えた独自のサービスでもてなすことで、お客様に期待以上の感動を与えることができるのです。
そういった意味で、個人的には、カジュアル・レストランの接客の方がいろんな試みができ、自分のカラーを出しやすいと思うのです。だから毎日が面白い。
"新川語録"に影響されて…
接客する側の性格は、サービスにも出るものです。お客様が有吊芸能人や、年配の会社役員だったりすると、たいていは萎縮してしまいます。若いスタッフなどは特にそうですね。私も以前はそうでした。
そんな時、新川社長によく言われたのは「ズバッと行け!《という言葉。プロである限り、どんな相手でも最高のサービスで真剣にもてなす、という姿勢には変わりはありません。プロのとしてのプライドも時には必要なのです。
もうひとつ、新川社長に言われてずっと心に残っているのは「後ろ髪をひかせるサービスをしろ!《。例えば、お客様にお料理の説明をする際、食材や調理などの情報を一度にすべて詳しくお客様に説明してしまうのは、親切な接客のようで、実はNG. お客様に考えてもらう余裕を与えることが意外と大切なのです。
まず「今日の食材は…《とお伝えして一度下がり、お客様に食材のイメージを膨らませていただいた頃に「今日はその食材をこのように調理します…《と説明して、その後にお料理を提供します。召し上がりながら、味について興味がわいてきたころに、「今日のソースの隠し味は…《とさらに補足情報を追加でお話する――このように、お客様の気持ちに沿うように段階的に料理の説明をしていくのです。そういう接客をすると、自然にお客様は私のことを目で追ってくれるようになるのです。
以上のように、料理の情報も、店も、自分も、一度にすべてを出し切らずに、「もう少し、話したかったのに…《「もっと知りたかったけれど…《と感じていただけたら「後ろ髪をひかせるサービス《だったということです。私は普段、こういった接客を目指しているのです。
最初のドリンク一杯で攻め方を考えろ!
またプロである限り、お客様の要求を満たすだけではなく、それ以上のご提案をして満足していただきたいものです。お客様が言われたことだけをやれば、お客様はけっして上快には思わないでしょう。しかし、その接客が印象に残らないのも事実です。それでは誰がやっても同じサービスなのです。自分にしかできないサービスをしてはじめて、ホスピタリティなのだと私は思います。
だから私は普段、最初のドリンク一杯の注文時に"戦い方"をまず思案します。その瞬間に、これまでの経験の中から、あらゆる攻め方を幾通りも考えるのです。もしメニュー表を見ないで、お客様がシャンパンをスマートに注文されたりでもしたら、緊張感で膨れ上がります(顔は笑顔ですが…笑)。外食慣れしているお客様ほど、満足感のハードルは高いですからね。
そして帰り際、「ありがとう《と言っていただけた瞬間、この仕事をやっていて本当に良かったと心から思うのです。
次回へ続く... |