20以上もの業態を、海外も含め1440店舗展開している潟激Cンズインターナショナル。不動の地位を確立している同社の主要ブランドのひとつが「土間土間」だ。高級レストランとはまた違う独自の接客ノウハウが求められる居酒屋業界において、「土間土間」の接客は常にハイレベルをキープ。今回は中でも、入社三ヵ月後に店長に昇格した弱冠24才の若手成長株・光岡さんに直撃取材した。
制服に着替えたら“現代の若者”から脱皮 14時50分。15時からの取材にはまだ10分早い。しかし店の前まで行くと、快くバイトの人が中に入れてくれた。営業前&仕込み前の時間帯。まだ誰もが私服姿でくつろいでいる。記者姿の私以外は。
ほどなくすると今どきの若者風の格好をした男性が一名、店の扉を開けた。店員の多くが20代の若者なのだと改めて気づかされる。その男性は先ほどのバイトの人に何やら確認をすると「お待たせしました」としゃがみこんできた。いや、私の目線に合わせて腰を低くした、という表現が正しいか。私の目をまっすぐ見ながら自分の名前を名乗ると、「すぐに着替えて参りますので…」と丁寧にお辞儀をしてその場を去ったのだ。
その間、私はただ呆気にとられていた。見た目からすると確かに現代の若者という感じなのである。しかし一方で、物腰穏やかな話し方や礼節をわきまえた態度からは、ベテラン・ギャルソンのような紳士的な雰囲気が感じられる。そのギャップにやや混乱していたのだ。彼の周囲には上品で優しい空気が確かに漂っていた。
名刺を片手に戻ってきた彼は、今度は紺の木綿の制服姿。「お待たせしました」と笑顔で挨拶した彼は、先ほどの“現代の若者”からは見事に脱皮しているのだった。これが「土間土間 亀戸店」の光岡店長のファースト・インプレッションだった。
アイコンタクトでお客様の性格まで探る! 光岡店長は現在24歳。大学時代に居酒屋で働き、「土間土間」でもアルバイトの経験があった。最初は「深夜まで勤務できるので他のバイトより給料がいい」という理由で友人に誘われるまま働いていたが、次第にお金目的ではなくなってきた。
“本気で取り組めるもの”の存在に気づき、そのまま(株)レインズインターナショナルに入社。副店長職からスタートして、入社三ヵ月後には店長に昇格するというスピード出世を果たしている。
「入店後はお客様にまず活気を感じて欲しいです。例えば大きな声と歯切れのよい挨拶。次にお客様とのアイコンタクト。どんなに忙しくても、目を見て挨拶や話をするように心がけています」と光岡さん。
光岡さんがアイコンタクトを大切に考えていることは、先ほどのファースト・インプレッションで理解できたが、その理由を光岡さんはこう話す。「目を見ることでお客様のその時の気持ちを知ることができますし、その人の性格まで探ることもできると思うからです」
例えば、表情が柔らかく目尻が下がっていて、元気一杯なお客様には「お待ちしておりましたよ」とフレンドリーに声がけし、「今日は飲みたい気分かもしれない…」と察してドリンクの追加オーダーは普段よりこまめに取る、といった具合。
逆に「いらっしゃいませ」と挨拶しても、あまり目を合わせようとせず、硬い表情のままのお客様には、「騒がしくするよりも、ゆっくり一人で落ち着きたいのかもしれない…」と想像を膨らませ、できるだけ邪魔の入らない端の席を案内する。
正論だけで人は動かせない
アルバイトの人までが光岡さんのようなきめ細やかな接客を実現できているのが、「土間土間」の魅力のひとつであろうが、それに大きく貢献しているのが月に一回実施している「覆面調査」だ。お客のふりをした調査員が抜き打ちで店に訪れ、200項目以上に渡って項目ごとに点数で評価し、後でその結果を店側に報告するという仕組みだ。
亀戸店は200点満点中194点を獲得したこともある優秀店。目標の180点を毎月超えることを目標に、社員とバイトが一丸となって店の質向上に努めているのだ。ちなみにさまざまな価値観のお客様がいるので、200点満点を目標にはしていない。賛否両論の接客があってしかり、という考え方だ。
24歳の光岡さんにとってスタッフのほとんどは自分より年上。だからスタッフを教育するというより、「みんなで力を合わせよう」というスタンスで店をまとめあげている。「接客力向上の要は、スキルやマニュアルより、むしろ人間関係」と断言する光岡さん。長い時は一人2時間もかけて個人面談を実施している。
亀戸店の店長になってちょうど1年が経つ。「人のマネジメントは本当に難しい」と光岡さんは話す。正論を唱えてみても、人はなかなか動かせないということがわかってきたのだ。「店の売上目標だとかを何百回言っても、人はなかなか動きません。むしろ不満に思います。本当に相手のためによいと思っている、だからこそ提案しているのだという姿勢でないと、心には響かないのです」。まず相手を尊重することからマネジメントははじまるのだと気づいたところだ。
亀戸店のスタッフや常連客は、光岡さんをフレンドリーに「みつさん」と呼ぶ。街でお客に出会えば必ず呼び止められ「これから食事でも行こうよ」と誘われる。「みつさんに出会えてよかった」と言われるような存在になりたいと話す光岡さん。スタッフやお客にとって“存在価値のある大きな人間”になることを目標を掲げている。 |