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第37回 株式会社エムグラントサービス 代表取締役 井戸実氏
update 09/03/03
株式会社エムグラントサービス
井戸実氏
株式会社エムグラントサービス 代表取締役 井戸実氏
生年月日 1978年、神奈川県生まれ。
プロフィール 寿司職人を目指し高校卒業後「築地すし好」に就職。約3年間の勤務後、独立に向けて店舗開発のノウハウなどを学ぶため「牛角」を展開するレインズインターナショナルのほか複数企業での勤務を経験し、2006年に「株式会社まいど」の代表取締役に就任。と同時に自身で「株式会社エムグラントサービス」を設立。
「株式会社まいど」から飲食店8店舗の経営権を買い取り、郊外ロードサイド型居抜き専門飲食店経営をスタート。現在7業態、35店の飲食店を経営している。
企業HP http://www.mgfood.co.jp/
アニメ「ド根性ガエル」の梅さんにあこがれ寿司職人を目指した井戸氏は、若干30歳で35の飲食店を経営するやり手として業界で知られる存在となった。自ら手掛けるブログ「ロードサイドのハイエナ」では歯に衣着せぬ持論を発信。しかし一見やんちゃに見える若き実業家が理念としているのは“利他の精神”。「顧客、スタッフ、取引先…関わるすべての人に必要とされる会社」を企業理念として成長路線を歩んでいる。「30歳で独立」という目標を前倒しで実現した井戸氏に、これまでの仕事人生を聞いた。

中学時代に決めていた寿司職人としての独立

 情に厚くどこかおっちょこちょいで周りから愛される“梅さん”とは、アニメ「ド根性ガエル」に登場する寿司職人。井戸氏がその梅さんに憧れ進路を決めたのは中学時代。卒業文集に「30歳で寿司屋の店主になる」と明言した井戸氏の夢は、高校卒業時にもブレルことはなく、「築地すし好」への就職で一歩を踏み出す。
 しかし現実はそう甘くない。「20万に満たない月給から資金を貯えていくのでは30歳での独立は到底無理だと気づいたし、殆どの先輩は独立を視野に入れていなかった。このままでは夢のまま終わると路線変更しました」というように“働き方”を変えていく。人との出会いも大きかったが、目標に向かってがむしゃらに、しかし柔軟にキャリアを積んでいったことが“30歳で店主”どころか“35店舗の経営者”になれた要因と言えるのだろう。
 神奈川県川崎市で3人兄弟の末っ子として生まれた井戸氏は、放任主義の家庭でのびのびと育った。中学までは野球少年、高校時代はバイトと夜遊びに明け暮れる。寿司職人になることに揺らぎはなかったため、アルバイト先として選んだのは地元の寿司屋。就職が間近に迫ったある日、その店主に相談したことで「築地すし好」への就職が決まる。「どこよりも早く仕事を覚えカウンターに立てる寿司屋ってどこでしょうね?」。「築地すし好」は当時急速に店舗を拡大しはじめ、通常7〜8年の修業を経なければ任されないカウンターの仕事を早く経験できる店の一つだと教えられた。井戸氏は迷いなく就職を決めた。
 そして最も繁盛している銀座店に配属となり、夢を叶えるべくがむしゃらに働いた。12名いた同期だが1年後に残っていたのはたったの二人。体力と夢があった井戸氏が弱音を吐く事はなく、入社2年、20歳でカウンターに立つスピード出世。「16:00〜4:00勤務の遅番の日も午前中から出勤してました。昼までに魚の仕込みが終わってしまうので、給料が出なくても出勤しないわけにいかないでしょ(笑)」。腕を磨いて、お金をためて、独立だ! まだ現実に引き戻される前のエピソードである。


独立に不可欠な不動産の知識。店舗開発職で知った飲食業界事情

 独立資金を2000万円と踏んでいた井戸氏が仕事を変えたのは23歳の時。「牛角を展開していたレインズインターナショナルが未経験OKで店舗開発を募集していたんです。独立するには不動産知識は不可欠だし、勉強にもなると思って転職を決めました」。小田急線沿線の店舗開発を任された井戸氏は、牛角にとって最適な立地を保有するビルのオーナーや不動産会社を回りはじめる。交渉というより頻繁に通って顔を覚えてもらい、空き物件が出れば一番に声をかけてもらう関係を築くことが大事な仕事。「物凄く泥臭い仕事でしたね(笑)」。
 その牛角でも井戸氏は早期に頭角を現す。入社4カ月で2店舗の契約が実現することとなったのだ。しかしすべての交渉事を終えいよいよ明日契約となった日、テレビ、新聞の一面トップを飾ったのがBSE問題だった。「FCオーナーさんが揃って契約を取り止めたいと言ってきました」。外的要因が命取りにもなりかねない飲食業界の現実を痛感したという。
 ただ、ここでの仕事、トップの考え方が、今の井戸氏に大きな影響を与えている。「FCオーナーをお客様、さらには自分の親だと思いなさいと開発部長に言われながら仕事をしてきました」。確かに何千万円という自己資金を用意するオーナーは真剣そのもの。「自分の親にこの物件で商売をはじめようと胸を張れるか?」。レインズインターナショナルは、誠実な仕事の積み重ねでしか成功はありえないと考える企業だったのだ。加えて井戸氏は、後に転職した「店舗流通ネット」の創業者、江藤鉄男氏から“利他主義の精神”を教わることとなる。現在率いている会社の企業理念に、この“利他主義”をスライドさせている。顧客、オーナー、取引先、そして社員。関わるすべての人に必要とされる会社でなければ存続はありえないという考え方は、20代前半のこの時期に刷り込まれたといっても過言ではない。
 さて、肝心な独立資金だが、固定給のレインズインターナショナルで多額の貯金をするのは難しかった。得たのは店舗開発のノウハウ。「今度は店舗開発をやりながら、自分の商売ができる物件を捜せる会社はないかと思いました。そんな時目の前に現れたのが店舗流通ネット社です」。


前倒しの26歳で居酒屋を切り盛り。内情はドタバタ!

 レインズインターナショナルに1年半在籍し18の出店を実現した井戸氏は、その後小林事務所という会社で1年間業態開発を勉強し、26歳になっていた。独立目標まであと4年。前述したように自ら商売できる物件を捜せる職場「店舗流通ネット」に転職した。そして入社3カ月目にその物件が現れる。
 「祐天寺のとある飲食店が店を閉めるという情報が入り、その立地なら自分でやってみたいと思ったんですね」。店舗開発の経験から「いける!」と感じた井戸氏は、100万円の貯金しかなかったが親族から1200万円を借り経営に乗り出す。もちろん会社は辞められないため店舗運営は集まってくれた仲間に任せる。「月350万円売り上げれば事業計画通り。借金も2年で返せます」。
 ところがいざオープンしてみると想像通りに事は運ばなかった。毎月の売上は200万円に満たず、12月の書き入れ時に生牡蠣で食中毒を起こしてしまう。「今では営業努力が足りなかったと明らかに分かるんですよね(笑)。傍から見ているのと当事者になることは大違いでした」。開店1年でなんとか軌道に乗ってくるが、経営難の期間は自分のサラリーマンとしての給料を持ち出す自転車操業だったという。
 さて、創作居酒屋が事業計画通りの売上げを生み出すようになった2005年、上司がMBOによって立ち上げたワイズフードシステムに取締役として参画した井戸氏は、郊外のロードサイドで運営されたいた「ステーキ&ハンバーグ いわたき」6店舗の経営権を肉の卸問屋の資金援助を受けて買い取る。そして翌年立ち上げた「株式会社まいど」の雇われ社長となる。


郊外ロードサイドの居抜き物件。一貫したコンセプトで多店舗展開

 26歳で1号店を出し成功させた井戸氏の目標は、「30歳で独立」から「30歳で3店舗の経営者になる」ことに変っていた。ちょうどその折、「株式会社まいど」の経営店が8店舗に拡大。全店の経営権を自身で買い取り、本格的に多店舗事業に乗り出すことに決める。「株式会社エムグラントサービス」の設立である。
 郊外ロードサイドの居抜き物件を中心にリーズナルブな料金で食事ができるレストランを次々出店。“ロードサイドのハイエナ”と注目されるのに時間はかからなかった。この飲食店スタイルは、これまでの井戸氏のビジネス経験の踏襲が形になったものといえる。“ハイエナ”との見方もできるが、撤退する側にとっては“救いの神”。まさにWin Winの関係があるからこそ現在(2008年2月末)の7業態、39店の飲食店が順調に経営できているのかもしれない。また自らの成功体験に基づく“郊外ロードサイドの居抜き物件”を軸に一貫したコンセプトで店舗展開をしているから、エムグラントサービスは強いのかもしれない。
 中学時代からの夢であった寿司職人ではないが、見事に前倒しで独立を果たした井戸氏は、自分の店をオープンする感動、達成感はなにものにも変え難い喜びだという。「自己資金がなくて独立ができないというなら、ぜひウチに来て欲しい。1年目は店長としてお店を任せ、きちんと事業化できる人なら独立を支援していきます」。独立の感動をより多くの人に味わって欲しいという。
 さて「梅さんへの憧れ」はまだ消えたわけではない。「実は僕、銀座の高級寿司店での勤務経験もあるんですよ」。素材、仕込み、接客など別世界の一流を見てきた井戸氏は、いづれは小さな高級寿司屋のカウンターに立つことも視野に入れている。「お世話になった人を招いて精一杯の恩返しをしたい」。利他の精神がこんな夢にも現れている。


思い出のアルバム
思い出のアルバム1 24歳の頃

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