「賢い会社だな」が入社のきっかけ

編集 佐藤さんが就職活動をされた頃は、外食・飲食業界という概念がまだ確立されていなかった時代だったと思います。マクドナルドへの入社の決め手になったのはどんなことですか?

佐藤氏 僕は大阪出身なんですが、梅田店は日本で18番目にオープンした店で、なんとここが世界ナンバーワンの売上げを上げる店だったんですね。大学生だった81年当時「マクドナルドのハンバーガーを食べる」ことと同様に「マクドナルドでバイトをする」ことが流行の先端でもあり、夜の3時間程度でしたがバイトをしました。
ただ、アルバイトはしましたが大学卒業後の就職先としては考えていなかったんですよ。おっしゃるように当時は“外食産業”という概念すらありません。本当はある商社へ就職するつもりでいたんです。

編集 それがなぜマクドナルドへ?

佐藤氏 マクドナルドがドメスティックな外食企業の業績を80年代前半に抜きトップに躍り出たんです。これまでの日本にないビジネスモデルを確立して、それで実際に業績を上げている。もしかしたら凄い会社、面白い会社なんじゃないかと思うようになってきたわけです。
そうして調べてみると、マクドナルドは食べ物を売っているというよりもシステムを売っている会社だと思ったんです。システムを売るコンピュータメーカーも物を売る側面もある。ならばマクドナルドという賢い会社に入るという選択もあるなと考えが変ってきた。『エクセレントカンパニー』という著書からも衝撃を受けました。

編集 ご家族など周りの反応はいかがでしたか?

佐藤氏 両親には反対されました(笑)。私の実家は割烹料理屋をやっていまして、ある意味対極にあるような業態でしたから「どうしてそんな所へ」という思いがあったんでしょうね。でも僕としてはそこに興味を持った。親の経営する料理店は、時価の料理がありますしどんぶり勘定的なところがある。しかしマクドナルドはグローバルな知恵を活かして機器やサービスを開発して世界共通の味を提供し、世界共通の商売を展開している。つまりきちんと数値化するビジネスで「こんなもんかな」とか「こんな塩梅かな」というところがないわけです。こういう業態でキャリアを積んでおけば、いずれどういう道に進む上でも役立つはずだと考えました。

編集 実際に入社されていかがでしたか?

佐藤氏 先見の目があったと思いましたよ(笑)。日本にファストフードという新しい業態を根付かせるお手本のない仕事にチャレンジすると同時に、グローバル共通のシステムで事業拡大を図る前例のないビジネスを体験できた。しかもマクドナルドは年功序列ではなくできる人材に大きな仕事を任せる企業文化ですので、本当に仕事に熱中しました。店長を経験後スーパーバイザーとなりエリアを束ねる業務を担当し、西日本を中心に出店などにも多く携わりました。その後、「東京本社で人事をやってくれないか」と異動の声がかかりました。

「個人のタレント」にフォーカスした本当の適材適所、
そして教育の大切さ

編集 仕事には夢中になる楽しさの反面、苦悩もつきものだと思います。佐藤さんはどのような苦悩を経験されているのでしょう?

佐藤氏 マクドナルドでキャリアを積んできた者として、社員がより自己実現しやすい会社にしていくことが私の役割ではないかと思っています。いま現在の現実的な話しでいくと、ヒューマンリソースマネジメントができているか常に自問自答している点です。自分の採用した社員がポジションや出世ということでなく、本当にやりたい仕事に就けているか、望む仕事に就けているか、そして採用、教育から退職まで本人にとってベストなキャリアを考えてあげられているのか。そこに私の苦悩があり、もちろん仕事の面白さであるとも捉えています。

編集 飲食業界の成長と同時に採用競合が乱立しています。マクドナルドを選ぶ理由はどこにあるとお考えですか?

佐藤氏 マクドナルドの経営に刺激を受けて起業した人、若い時にマクドナルドでバイトをして有名アーティストになった人…。マクドナルドがきっかけとなって社会に羽ばたいた人、新進気鋭の企業トップになっている人たちがたくさんいます。まず、そういう会社であるということを再確認していただけるといいかなと思います。常に新しいチャレンジをしている会社なので学べることが多く、それが“個のキャリア”に繋がっていく。「マクドナルドを利用する」くらいの気持ちを持っていると、ビジネスパーソンとして本当に強くなれると思います。

編集 マクドナルドで完結するのもいいけれど、マクドナルドをキャリア構築の1ページとして活用するのもいい、ということですね。

佐藤氏 そうです。現在私たちは、店長候補を採用職としていません。みんなが店長になったり、営業部長を目指すのではなく、個々のタレントにフォーカスした採用や教育をしていこうと考えています。でもそのためには、本人の志向がとても大切になってきます。「3年後、5年後自分はこうなっていたい」と漠然とした状態でもいいので持っていると、私たちはそのWantsを実現するために共に協力していくことができます。様々な価値観が共有できる会社であることは、多様性に優れた柔軟で強い会社であること。そうしたことは経営方針として浸透させていくものでなく、現場の個々の事案でどれだけ実現していったかがまたその次に繋がっていくのだと思うのです。

編集 佐藤さんご自身は一貫してマクドナルドの社員を貫いていらっしゃいますね。一企業内で「個人のタレント」を活かす事例としてはどのようなことが言えますか?

佐藤氏 マクドナルドの商品は食べ物で、ビジネスモデルはファストフードレストランです。しかしここで働いて得るもの、培うものは個々によって異なります。私は学生時代に店舗でのアルバイトを経験し、就職後も店長、店舗のエリアオペレーション業務に携わってきました。しかし人材採用・教育という新しい職域に携わり、例えば社員の能力開発の分野でスペシャリティを磨いていくことができるようになってます。そしてこのスペシャリティは、マクドナルドのみで役立つものでなくビジネスパーソンとしての強いスキルになると考えています。「とことん接客にこだわっていきたい」「営業力をつけたい」「地元でお店を持つためのノウハウを学びたい」「世界をビジネスの舞台としたい」「社会貢献(CSR)のスペシャリティをつけたい」…。マクドナルドには様々な領域の業務・職種がありますので、社員自身の志向次第で、様々な方向のタレント性を伸ばしていくことができるのです。

PART2へ続く